デウィ スリ物語
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この稲の女神デウィスリにまつわる昔話はいがいと多いんです。
稲の物語に必ずと言って出てくるのが、デウィスリという名前の天界の女神。
デウィは女神または美しい女性。スリはつややかに光るとか高貴な人と言う意味です。
ある王国に仲の良いデウィスリという王女とラデン・サドノという王子の姉弟がいました。
国王はサドノに隣国の王女との結婚を勧めますが、サドノは姉が好きだったため、それをこばみ父王の怒りに触れ、城をあとにします。
それを知ったスリはサドノを追って城を出ます。
一方、この国の山奥に住むラクササ(魔物)の王が夢の中に出てきたスリに一目ぼれしてスリと結婚しようとスリを追います。
スリは、サドノを探しながら、訪れる村々に米や農作物を害虫から守る方法や生活の知恵を授けながら、旅を続けます。
色々な障害(ラクササの追手)を乗り越えて、二人はメダンアグン村で再会します。
そして二人でこの地で暮らすことを決意します。
一方 スリとサドノの父王スリマオウハプングンは二人の安否を気づかい、国へ帰るように使者をだします。
国王のもとに戻った使者から、異国の地で静かに田畑を耕したいという娘と息子の考えを知った父王は思わず悲しみの言葉をもらします。
【なぜ、そなたらはこの父の願いを無視するのか。
スリよ、そなたはその皮膚をかえおったか、田のヘビのように。
サドノよ、そなたはなぜ燕のように異国で巣作りをはじめたか】
愛する子供たちをのろうつもりではなかった王の言葉は、もはや取消しする事はできず、現実となったのでした。
一夜明けて目覚めたとき、デウィスリは田のヘビに、サドノはツバメに変身していました。
やっと新しい生活を始めた二人でしたが、お互いを分かることが出来ないまま、それぞれあてもない旅へと出る事になったのでした。
スリがやってきたのはウィトロ国のはずれの村でした。
この村の村長はウリグ、妻はサンギといい 彼女は妊娠していました。
長く子供が出来ず、徳の高い坊さんに教えを請い、やっと妊娠する事が出来たサンギでした。
やがて生まれる日が近づき、そのお坊さんをたずねました。
お坊さんは
「やがて生まれる子は、デウィ・ティスノワティ(天界の女神)の生まれかわりのおひとりです。
デウィ・ティスノワティとデウィスリは一心同体。しかし、そのお子には災難がふりかかるでしょう。
それを防ぐために あなたはひと房の稲の穂を髪飾りにしている田のヘビを探してよくお世話しなければなりません」
稲田のヘビを手に入れたウリグは、夢の中に、田のヘビが現れます。
そして これから起こる災難への立ち向かい方を教わります。
実はこの時、天界には騒動が持ち上がっていたのです。
天界の美女デウィ・ティスノワティが宇宙支配の神 ブトロ・グルにことわらず、人間に生まれかわるために地上に降りて行った事がわかったからなのです。
このため、至高神は、ラクササ姿の神ブトロ・コロを呼び、オオカミに変身して、ティスノワティの魂が入った赤ん坊を殺し、彼女の魂を天界へ戻すようにと命じたのでした。
翌日、昼寝をしていたウリダの夢にまた 田のヘビが現れ、子供を殺そうとやってくる物たちの事を告げます。そしてその解決方法を教えるのでした。
それ以降、ひつような神の攻撃を受けます。
さしもの宇宙支配の神 ブトロ・グルもこの失敗が田のヘビに変身させられたデウィスリのものだと気づきました。
グルはデウィ・スリの超能力をたたえ、天人の仲間入りをさせようと考え、その旨 スリに伝えました。
スリは申し出はありがたいのですが、弟が動物である以上、自分が天人になる事は出来ませんと答えます。
そのころツバメに変身したサドノはついにインドまでいき、高徳の僧ブガワン・プラフマナルシの祭壇の天井に巣を作っていたのでした。
この僧にはデウィ・ラクスミタワニという名の一人娘がいて、まだ会った事もないサドノ夢をみて一目ぼれをしてしまいます。
どうしてもこの王子と結婚したいという娘の願いにジャワ島に探しに行こうとします。
彼は祭壇に納めてあった祖先伝来の弓を取ろうとして鳥の糞が付いているのを発見します。
見上げるとツバメの巣があります。
怒った僧はツバメを射ます。死体は消え、立派な王子が現れました。
彼こそが娘が求めていた王子だったのです。
田のヘビのスリは天人たちからこの話を聞き、サドノはまだ地上に残された仕事があり すぐに天界へはのぼれないが、グル神にはすでにサドノのが天界へのぼったときに彼の居場所を用意してある事を知りました。
その仕事とは、デウィ・ラクスミタワニと結婚して子をつくることであり、その子孫はやがて
ジャワ島の王となる運命をもっていたのでした。
こうしてスリは天人になる事を承知しました。
しかし、スリはウリグ家の赤ん坊を残したまま天界に今すぐのぼるわけにはいかないと言います。
「もし私がいなくなれば、神は罪もない赤ん坊の肉体をころすでしょう」
それを聞いた天人はグル神の支持を仰ぐべく天界へ帰って行きました。
そして戻って来てグル神の言葉をスリに伝えます。
「デウィ・ティスノワティの魂の代わりに、別な女性の魂がこの赤ん坊の体内にはいり、
やがてこの女性から生まれる子の子孫はジャワ島の王になるだろう」
それを聞いてスリは天界へとのぼっていきました。
一方、その後のサドノは、僧の娘と結婚し 女の子が誕生します。この子の子孫はいつの日か
ウリグ夫妻のこの子孫の子と結婚しジャワの王を生む事になるでしょう。
それが宇宙支配の神ブトロ・グルの定めだったのです。
子の誕生によって、サドノの地上での役目は終わりました
その翌日、サドノは誰にも別れを告げず、天界へのぼり、久しく別れていた最愛の姉
デウィスリと手をとりあい、喜びにむせんだのでした。
稲の女神デウィスリにまつわる民話や物語も インドネシアじゅうに数えきれないくらいあります。
稲の女神は 稲そのものを育てたり、守るだけではなく、すべての農作物に関わりをもち幼い子への悲しいほどな思いやりがいっぱいです。
(参照文献 悲しい魔女 インドネシア物語(著 松本 亮)











