アジアと侵略戦争

◆「アジアと侵略戦争」◆
今年・2008年は「日・イ友好50周年」ということで、ジャカルタではさまざまな団体が、それぞれに趣向を凝らしたイベントを企画し、友好年を盛り上げた。
「日本の祭り」では、秋田県から招待された「竿灯」や、神輿、和太鼓、盆踊り。
原宿ファッション・コスプレ・ドラエモン漫画なども人気を集め・・・
“クール・ジャパン”・“ようこそ・ジャパン”の普及にも一役買った。
イベントには多くの若者が集まり、日本文化に対し熱のこもった視線を注いでいた。
こうした現状肯定的、未来志向的交流は、それなりに意義深いもので更なる友好発展を願いたい。
ちょうどそんな時、日本からのニュース報道で歴史問題に関する騒動が持ち上がっていることを知った。
防衛省・田母神航空幕僚長の「日本は侵略国家であったのか」という論文。
今日までの日本政府の公式見解とは相反する歴史認識の問題だ。
幸か不幸か、この問題 当地・インドネシアのメディアには、ほとんど取り上げられなかったようだ。
私自身は戦後の生まれ。
先の大戦の当事者でもなければ、歴史問題を勉強している学者でもない。
だからここで、“正しいの 間違っているの”と論じるつもりは無い。
こうした歴史認識の問題・・・全く同じような言葉を、かなり以前の事だが聞いた記憶がある。(頻繁に出ているのかもしれないが・・・)
私の記憶に残っているのは、元・伊藤忠商事会長を務めた瀬島龍三氏の談話。
瀬島龍三氏といえば、旧日本陸軍参謀本部作戦課のエリートで、まさに先の大戦の“渦中”にいた人だ。
「歴史を無視することは歴史によって処断される・・・」と前置きして「対英米戦争は自存自衛のために立ち上がった。大東亜戦争を侵略戦争とする論議には絶対に同意できない」と述べた。
戦後、伊藤忠商事に入り出世街道を駆け上ったこの人。
アジアにばら撒かれた日本の「戦後賠償資金」に群がり、インドネシアを手始めに、韓国などでも大儲けをしたらしい。
(何故“賠償”が必要だったのかは、その時、どうでも良かったのか・・)
「侵略」か、どうかは論ずるつもりは無いが、旧日本軍がインドネシアに進駐し、駐留したことは確かな事実。
長い間植民地として当地に君臨した「宗主国・オランダと戦い、アジアを解放した」との論議もよく耳にする。
だが、それだけで終わったわけではないだろう。
インドネシアとの関係は、比較的穏やかだったとの話を聞くが、アジアには、他にも
フィリピン、マレーシア、シンガポール、ビルマなど、必ずしも“穏やかな関係”だけでは済まされない、多くの悲劇が残されている国々もある。
要は、中国をはじめアジアに拡張して行った日本側の“都合・論理”だけではなく、
「受け手」の側の論理も考慮した「歴史観」が必要なのではないか。
満州の問題がこじれ、「日本の国民感情としては、満州の放棄は認めがたく・・」と、国際連盟からの脱退を表明する松岡洋介外務大臣の演説に対し、中国代表は
「国際的紛争に於ける正邪の判定者は、日本の国民感情なのであろうか・・・」と反論した。
田母神氏の論文を読んでみると、多くの日本人の犠牲や、亡くなった“英霊”には、
言及しているものの、二千万人を超えるアジアの犠牲者への真摯な言及は無く、勿論、「責任の所在や反省」は感じられない。
アジアでは「大東亜戦争を戦った日本への評価は高いとの声もある・・」と述べているが、それとは反する評価もあることは取り上げられていない。
「侵略ではない」ならば責任の所在は勿論の事、反省も必要ないのだろうか。
作家の船戸与一氏は
「こういう戦争責任の真の所在が問われなかったという事実は、その後の高度成長からバブル破綻という浮き沈みに携わった官僚や金融テクノクラート達を甘やかし傲慢にする。
彼らがどれほど酷い失敗をやらかそうと、責任を取ろうとは思いもしないのだ。どういうかたちでメディアから指弾されようと、失敗を失敗として認めようとはしない。この傾向は、戦前から戦後へとつながる“現代史の産物”」と述べている。
現代の官僚や金融テクノクラートたちの問題は、まさに目の前にある
“ホット・イシュー”。
金融関係者が“どれほど酷い失敗をやらかそうと”責任も取らず、「公的資金」の投入で、救済される。
まさに今の「金融危機」官僚も同様だ。
厚生省の次官経験者をターゲットとした連続テロ・殺人事件が起きた。
卑劣な事件で、犯行は厳しく指弾されねばならない。
この事件と前後して、官僚に対しては「殺人予告を含む恐喝などが、ネット上でも多くなっている」との報道もある。
徹底した再発防止対策が必要だ。
しかし一方で、こうした事件・風潮の背景には、官僚自身が引き起こしてきた多くの問題があることも確かだ。
責任の所在を明確にせず、“猛省”することも忘れさられるとしたら、このテロ事件の“教訓・意味”も半減されることになるだろう。
本当の再発防止とは、そこにしかない。


















